どくたーすらんぷ あまのさん

医学という特異な世界にどっぷり入り込んだあまのの日常

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医学教育について考えてみた

皆様こんにちは。
人生何回目かもう覚えていないくらい目の夏休み中あまのです。

今回の夏休みは病院実習キャラバンを行っております。
この度は3週間かけて北海道、関東から関西まで6つの病院・施設を巡る強行軍です。
今までねちねち行ってきたお勉強の成果を見る事が出来、とてもとても楽しいです。

とまあそんなキャラバン中にちらっと見たTwitter内で話題になった内容について、
皆様と考えていきたいと思っております。

なんかつらつらと書いていたら、もの凄く長くなってしまいました。
お時間のある時にでもごらん頂ければと思います。

紹介したい内容は、この記事についてです
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cadetto/igakusei/sasatta/201107/520944.html

リンクの記事を読むのもめんどくさい方のために、ざっくり説明しますと
この記事は医学生さん(達)が書いた記事です。

【背景】
・世の中は医師不足っぽいので、国としては医師を増やしたい
・医師を増やすためには医学部の新設や医学部増員をしよう!という世の中の流れあり
・実際2008年以降、国の施策で医学部の定員が増員されている

【これに対する各大学のお偉い様達のご意見】
・ゆとり教育によって学生の学力が落ちているので、これ以上医学部の定員を増やしたらお馬鹿医者が増える!
・お馬鹿医者が増えたら患者さんが不幸なので医者の数を増やすのはダメー!
・学力低下の具体例「1年生の生物、物理、化学の成績低下」「学生の授業中の態度が悪くなった」
・学力低下対策として「1年生に不足分野の補習を行っている」「講義・実習の出席を厳しくチェックしている」

【大学のお偉い様方に対する医学生記者さんのご意見】
・学力低下は学校・社会教育の劣化が原因。学生ばかり悪いみたいに言わないで欲しい
・医学部の定員を増やしたんだから学力が低下するのはしょうがない
・学力低下対策の「出席チェック」で締め付けるのはピント外れ。先生方の授業内容を振り返ってほしい
・「この授業は出る価値がある」と学生が考えたら出席する。レジュメをボソボソ読み上げるだけの授業の出席チェックする事が本当に学力低下対策につながるのか

【各大学のお偉い様達のご意見】
・学力低下の指標として「進級試験不合格者の増加」もある
・だからとにかく医学部増員はダメー

【医学生記者さんのご意見】
・「試験を難しくして学生を締め付ければ、国試合格率が上がる。ひいては大学の評価が上がる」という意図はないか
・試験を難しくすれば留年者が増えるのは当然の話であり、それを「学力低下」のせいと断定するのはいかがなものか

【さらに医学生記者さんのご意見】
・極論ではありますが、医学生の学力が落ちて何の問題があるのでしょう?
・患者さんが求めているのはどんな医師なのか?現場が必要としているのはどんな医師なのか?
・学力の問題にとどまらず、きちんと医学部が教育していこう、というような前向きな議論が必要

・イマドキの学生たちの交流(勉強会など)は昔よりも活発になっているはず
・メーリングリストやTwitterで大学や地域の壁を越えて交流したり学んだり、という学生達も大勢いる
・困ったときにすぐ「あれなんだっけ?」と聞ける仲間が全国にいる。少し前だったら考えられない状況ではないか
・「医学生の学力低下を理由に医学部新設・定員増に反対する」という後ろ向きな議論を展開はやめて、前向きな議論をしてください!


こんな感じの内容でした。
お医者さんのお偉いさん達は、色々な理由でお医者さんの数を増やす事には基本的には反対です。
ですので、今回は医学部定員増員の反対の理由に「学力低下!」を上げた所
学生さんの怒りを買ってしまった模様です。

この記事の内容について、Twitterやブログにていろな反応がありました

【肯定派】
・全く同意!よく言った!
・医学の進歩は著しい。覚える内容が激増して試験が難しくなっているのに「学力低下」はかわいそう
・学力低下だから増員反対でなく、学力上昇させるように努力しようよ

【否定派】
・ゆとりが開き直ってる
・今の学生って何様?
・「医学生の学力が落ちて何の問題があるのでしょう?」→患者は学力の高い医者に診て貰いたいです

・・・とまあ
色々な立場から議論はあるようですが、
奇しくも医学部定員が増員された2008年度入学のあまのの実感から見て
一つ一つ突っ込んで行く事にしましょう。

> 【背景】
> ・世の中は医師不足っぽいので、国としては医師を増やしたい
> ・医師を増やすためには医学部の新設や医学部増員をしよう!という世の中の流れあり
> ・実際2008年以降、国の施策で医学部の定員が増員されている

これは今更言うまでもなく、その通りですね。
特に足らないのは市中病院の勤務医なのですが、
40時間連続ひっきりなし勤務を週に2,3回行う類のお仕事をやりたがる人が少ないため
医者の数を増やしても、忙しい科の勤務医がそうそう簡単に増えるかどうかは微妙な所ですが。。

> 【これに対する各大学のお偉い様達のご意見】
> ・ゆとり教育によって学生の学力が落ちているので、これ以上医学部の定員を増やしたらお馬鹿医者が増える!
> ・お馬鹿医者が増えたら患者さんが不幸なので医者の数を増やすのはダメー!
> ・学力低下の具体例「1年生の生物、物理、化学の成績低下」「学生の授業中の態度が悪くなった」
> ・学力低下対策として「1年生に不足分野の補習を行っている」「講義・実習の出席を厳しくチェックしている」

実際大学の先生と話すと、2008年度以降入学者の評価は非常によろしくないです。
「基礎学力がヤバいくらい低い」、「非常に打たれ弱い」等々、言われたい放題です。

あまのは古き良き時代の医学生を見た事は無いので比較は難しいですが、
医学部の同級生達が全員ダメダメかというと、全然そうは思わず、ご立派な子が多いなあという印象です
特にダメダメ大学生だった過去の自分と比べると、こんなに頑張っていて大丈夫だろうかという子が多いです。
「2008年以降は定員が増えたので質が下がっているだろう」という先入観もあるかな、と思ってしまいます。

> 【大学のお偉い様方に対する医学生記者さんのご意見】
> ・学力低下は学校・社会教育の劣化が原因。学生ばかり悪いみたいに言わないで欲しい
> ・医学部の定員を増やしたんだから学力が低下するのはしょうがない
> ・学力低下対策の「出席チェック」で締め付けるのははピント外れ。先生方の授業内容を振り返ってほしい
> ・「この授業は出る価値がある」と学生が考えたら出席する。レジュメをボソボソ読み上げるだけの授業の出席チェックする事が本当に学力低下対策につながるのか

このあたりから非常に難しくなってきます。
大学の先生方はもの凄く忙しいです。日々の診療を大学病院でやりつつ、研究者としての結果も求められつつ、
その上、中々報われない(?)教育という仕事までやらないといけないわけだからです。

しかも大学の先生方は、教員免許を持っていませんし、教育実習も受けません。
「授業をする」という訓練も評価も受けないまま、授業をさせられるのです。
ですので、正直まじめに聞こうと思えば思うほど眠くなる授業があるのは事実ですが、
そんな中にも、もの凄く洗練された授業も多くあります。
非常に忙しく、報われる仕組みも少ない中、よくこんな授業をしてくれるなあという先生もおります。

記事からはそのあたりの事情に対する配慮がちょっと欠けているかな?と思うので
頑張っている先生がこの記事を見ると、ムカっときてしまうかも知れません。

あと、やはりこの記者の医学生さんは大学の授業というモノについて多くを求め過ぎている感も見え隠れします。
例えばあまのが一度目の大学生活を過ごした物理学科でも、正直眠くてしょうがない授業の記憶が多かったですが、

物理学科という科にやってきた同級生達は
「やった!物理科に入れた!これから大好きな物理やり放題!!」
「あこがれの~~先生の授業だ!」
「大学まで行って、好きな勉強できるなんで、僕は幸せだぁ」
「この式、すげぇ美しいと思わない!?思わず壁に貼っちゃったよ!」

という位の勢いで、物理を愛する方々が多かったため、
全ての授業に普通に全力で出席しまくり+質問しまくりでした。
そういう方々に比べると、ちょっと学問に関する情熱が薄いのかな?と考えてしまう事もあります。
(誤解無きよう補足すると、当時のあまのくんは大学物理について行くだけで精一杯でヒーヒー言っていました)

それにしても日本の医学教育における、教育システムには問題が多いと言わざるを得ません。
実際「臨床」も「教育」も、お人好しの先生方の使命感によって何とか成り立っている点が多い気がします。
このあたり、医療先進国のアメリカとかではどうやっているのでしょうね-。

> 【各大学のお偉い様達のご意見】
> ・学力低下の指標として「進級試験不合格者の増加」もある
> ・だからとにかく医学部増員はダメー

この点はあまのの大学でもよく言われています。
100人中、20人くらい留年する事はザラになってきました。
ただ昔の先生は「我々の時代なんて、30人くらい留年してたよガハハハハ」とか言っていたので世の中よくわかりません

> 【医学生記者さんのご意見】
> ・「試験を難しくして学生を締め付ければ、国試合格率が上がる。ひいては大学の評価が上がる」という意図はないか
> ・試験を難しくすれば留年者が増えるのは当然の話であり、それを「学力低下」のせいと断定するのはいかがなものか

大学が国試合格率をもの凄く気にしている事は確かです。
何故なら、大学の教育が数字的に評価される指標としてはこれが唯一絶対と言っても良いモノだからです。

国試合格率を下げないよう、試験を難しくしている傾向は一部見えるような気もします。
ですが正直、試験が難しくなったせいで留年が増えたと言い切れるか、というと微妙な印象です。
試験を難しくしていると言っても、例年それほど本質は変わっていないのではないかなと思うのです。

> 【さらに医学生記者さんのご意見】
> ・極論ではありますが、医学生の学力が落ちて何の問題があるのでしょう?
> ・患者さんが求めているのはどんな医師なのか?現場が必要としているのはどんな医師なのか?
> ・学力の問題にとどまらず、きちんと医学部が教育していこう、というような前向きな議論が必要
> ・イマドキの学生たちの交流(勉強会など)は昔よりも活発になっているはず
> ・メーリングリストやTwitterで大学や地域の壁を越えて交流したり学んだり、という学生達も大勢いる
> ・困ったときにすぐ「あれなんだっけ?」と聞ける仲間が全国にいる。少し前だったら考えられない状況ではないか

ここは見出しにもセンセーショナルに使われてしまった表現ですが、
ちょっぴり誤解されかねない表現だと思います。

医学生の学力≒医者になってからの知識 とすると、
患者さんが求めているのはやはり知識豊かなお医者さんであることは大前提なので
やはり「学力」を大事にする姿勢は動かしがたいと考えます。

またメーリングリストやTwitterによる知識の共有についての意見もありますが、
さすがに患者が急変した時とかに「意識混濁してきたんだけど、鑑別疾患なんだっけ?」とか
Twitterとかで聞き出すお医者さんでOK?と誤解されかねないので
気をつけた方が良いかなと感じました。

SNS等による交流は、意見や経験の共有には向いていますが、
知識の共有という点ではちょっとどうかな?と思います。
特に医学の知識は「~君がこう言っていたからこうなはず」ではちょっと危険ですよね。

ただ、医学生に求められるのは「学力」のみか?という観点ではまた別の議論が必要だと思います。
実際にお医者さんになったら「知識」だけでなく「問題解決能力」も求められるからです。

たとえば、、
・超不機嫌顔で診療を全力で拒否する子ども
・まとまりのない話を繰り返すおばさま
・もの凄く不機嫌な怖い顔をしたお年寄り
・よっぱらったやくざさん
・話が全然通じない認知症のおじいさま

という方々に対して一連の診療を行う為には、色々とその場その場の工夫が必要になります。
こういう人々に対して、診療に協力して貰うための方法は学校では教えてくれないため
問題解決能力を鍛える為に、学業以外の色々な経験をする事も少しは必要かなとは思います。
ただ、このあたりは学校での教育云々というよりは個々人の努力の範囲といえそうですが。。。


・・・とまあ、そんなこんなでとりとめもなくレビューしてきましたが、
大学側・学生側どちらの気持ちもそれなりに分ります。
だからこそ、対立する構図になってしまう事がちと残念な気がします。

「子供と大人は、別人腫なのか?」
「いや、大人はかつて自分が子供だった事を忘れ、子供は自分がやがて大人になる事を自覚していないのだ」

いい年をしながら若者の世界に身を置いているあまのとしては、
この言葉が頭の中をよくめぐることがあります。
色々な人の視点に立つと言う事は大変ですが、思慮深く生きていきたいモノです。
  1. 2011/07/30(土) 22:04:37|
  2. 医学部関連


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